このページは、次のように考えている方におすすめです。
- DaVinci Resolveには有料版(有償版=Studio)もあるって聞いたんだけど無料版との違いは何?
- DaVinci Resolveの無料版を使ってるんだけど、やっぱり有料版にアップグレードしたほうがいいのかな? でも、本当に買う価値はある?
DaVinci Resolveって無料版でも機能が豊富で、普段の編集で不自由に感じることはあまりないかもしれませんが、やはり有料版の存在は気になりますよね。
ただし、価格は4万円台と気軽に手を出せるものではありません。
僕もこの価格を知った時は、「とりあえず無料版でいいかな」って思ったのですが、結局、有料版にアップグレードしてしまいました。
僕はアップグレードしたことに満足していますが、人によっては買う価値はないと思っています。
この記事では、無料版と有料版の違いを、動画の知識があまりない初心者でもわかるように解説していきます。
執筆時点では、DaVinci Resolve 18(無料版)が最新版となっています。今後アップデートにより、本記事に記載の内容との相違が生じる可能性があることをご了承ください。
※ DaVinci Resolveの有料版の正式名称は「DaVinci Resolve Studio」。一方で、無料版は「DaVinci Resolve 18」といった感じで数字が最後に付きます。
もくじ
DaVinci Resolveの無料版と有料版の比較!何がどう違う?
まずは、価格の違いから。
価格の違い
無料版はその名の通り無料で、お試し期間といったものはなく、ずっと無料で使い続けられます。
一方で、有料版(DaVinci Resolve Studio)は、安く買う方法はありますが、公式サイトの価格だと47,980円(税込)となっています。
有料版は買い切り型なので、支払いは1度のみ。
最近流行りの、ずっと払い続けないといけないサブスクリプション型ではないところがいいですね。
続けて、有料版にしかない機能を詳しくみていきましょう。
「GPUアクセラレーション」で編集作業を高速化!
GPUアクセラレーションと言っても
?????
ってなりますよね。
まずは「GPU」と「アクセラレーション」の意味を知っておきましょう。
- GPU →「Graphics Processing Unit」の略で、画像描写を行う際に必要となる計算処理を行う半導体チップ(プロセッサ)のこと
- アクセラレーション(acceleration)→ 高速化、加速
これらの意味さえ分かれば「GPUアクセラレーション」がなんのことかわかるのでないでしょうか。
動画編集では映像(大量の画像)の処理が必要となるので、パソコン内の画像処理専門の頭脳である「GPU」が大きな役割を果たします。
また、GPU自体の性能の高さだけでなく、GPUをどのように使うかも大切。
DaVinci Resolveの有料版に備わっている「GPUアクセラレーション」を使えば、GPUの能力を最大限まで引き出せます。
その結果、同じ性能のパソコンであっても、よりスムーズかつ高速に動画の編集作業をすることが可能になります。
テストとして実際に、長さが5分ほどのフルHD(1080p)動画を書き出して、GPUアクセラレーションあり vs なしの比較をしてみました。
すると以下の結果に。(上はGPUアクセラレーションなし、下はあり)
GPUアクセラレーションなしだと、3分47秒かかりましたが、ありの場合だと2分23秒に。
その差は1分24秒と、かなり大きめです。
もしこれが4K動画で、さらに長い動画となると、差は一気に広がりそうですね。
ちりも積もれば山となる、そして時は金なり。
動画編集の頻度が多い場合や少しでも時間を節約したいなら、この機能はアップグレードの決め手となりそうです。
世界でも有数の洗練された「ノイズ除去ツール」
暗いところで動画撮影しなければいけない場合は、高確率で映像にノイズが乗ってしまいますよね。
特にスマホのカメラだとセンサーサイズが小さいことで、薄暗いところでもすぐにノイズが目立ってしまいます。
また、撮影設定を間違えて編集時に仕方なく映像を明るくしないといけないこともあるかと思います。
そういった時に、DaVinci Resolve Studioで使えるノイズ除去ツールは、まさに救世主。
簡単かつキレイにノイズを除去してくれます。
ノイズ除去ツールを使って実際にノイズを除去してみました。
他のノイズ除去ツールとして人気の高い「Neat Video」といったプラグインだと、12,000円くらいで販売されているので、その価格を考えるとお得感はありますよね。
30種類以上の便利なエフェクトやツール(Resolve FX)
無料版にもResolve FXと呼ばれる50種類以上のエフェクトやツールは使えますが、有料版にアップグレードすると、さらに30種類以上が追加で使えるようになります。
それらいくつかを挙げるなら以下の通り。
- フェイス&ビューティー(レタッチ)ツール
- レンズ歪曲収差
- フィルムグレイン
- フィルムダメージ
- レンズフレア
- デフリッカー(ちらつき除去)
- モーションブラー(被写体ぶれ)
フェイス&ビューティーツール
フェイス&ビューティーツールを使えば、Photoshopで画像加工したようなツルッツルの肌にできます。
しっかりと顔の各パーツを自動認識してくれて、細かな調整が可能となっています。
実際に使って比較してみました。
最近は4K動画が急激に増えてきて、観ている立場からすれば嬉しいのですが、映る立場からすれば毛穴やニキビがものすごく気になります。
これが影響しているのか、メンズコスメ市場が急拡大しているらしい…
フェイス&ビューティーツールはこれから活躍の場が増えそうです。
レンズ歪曲収差
レンズ歪曲収差は、GoProやスマホの超広角レンズを使って撮影した時に発生する歪み(ゆがみ)を一瞬で修正してくれる優れもの。
使用例は以下の通りです。
もし横に写っている友達の顔が歪んでいたら、この機能を使って修正してあげてくださいね。
フィルムグレイン&フィルムダメージ
フィルムグレインやフィルムダメージは、レトロ感のある映像を再現するのにピッタリ。初心者でも簡単に扱えるようになっています。
こういったエフェクトやツールをすべて他社(サードパーティ)から購入しようとすると、合計で10万円くらいにはなりそうです。
そう考えるとかなりお得ですよね。
AIの力を駆使した「DaVinci Neural Engine」によるスマートな機能
DaVinci Resolveには「DaVinci Neural Engine」と呼ばれる、AIの力を駆使した技術が搭載されています。
おかげで、これまで時間がかかっていた作業を短時間で完了できたり、ユニークな機能を実装することが可能となりました。
「DaVinci Neural Engine」は無料版で使える機能の一部でも使われているようなのですが、ここでは有料版で使える機能のみを紹介します。
顔認識
「顔認識」はAI機能としては定番になりつつありますよね。
普段からスマホのロック解除も「顔認識機能」を使っているのではないでしょうか。
AI顔認識は、動画編集でも活用が可能。
例えば、動画内に複数人いる場合に以下のように「振り分け」ができます。
そうしておくことで、「Aさんが写っている映像だけを編集したい」と思った時に、該当の映像のみに絞り込めるため、時間を短縮できます。
とはいえ、これは映画のようなスケールが大きな場合に力を発揮するので、小さなプロジェクトに取り組む場合は使う機会はあんまりないかもしれません。
この顔認識機能は、先ほどの「フェイス&ビューティーツール」でも使われています。
マジックマスク(Magic Mask)
マジックマスクは「カラーページ」で使える機能で、映像内の指定した部分だけを簡単に選択(マスキング)できる機能です。
上の画像では、「Person(人)」を指定してみました。(正しく選択されているかを分かりやすくするために周りを暗くしてあります)
顔と腕の上に水色の線が見えるかと思いますが、それらをマウスで適当に書くだけで自動的に範囲選択をしてくれます。
選択した箇所はトラッキング可能ですし、縁(フチ)の細かな修正もできますよ。(今回はかなり雑に選択していますが…)
この機能を使うことで、特定の箇所のみの色や明るさを調整するのが容易になります。
マジックマスクは人(全身)だけでなく、体の一部(顔や腕、脚、髪の毛)や衣類も指定可能となっていま
実際に、「腕」のみを選択してみました。
感動的…
Super Scale(スーパースケール)
Super Scaleは、AIの力を使って映像の解像度を上げるという近未来的な機能。
例えば、フルHDの映像をSuper Scaleで4Kに引き伸ばすことができます。
とはいえ、実際に4Kで撮影した方が、さすがに映像は綺麗になります。
もし、4K映像とフルHD映像を組み合わせて動画を作る必要がある場合は、この機能を使ってフルHD映像の解像度を上げると4K映像の方を台無しにしなくて済みます。
YouTubeにSuper Scaleあり vs なしの比較動画を投稿したのですが、YouTubeによる圧縮の影響で違いがわかりづらかったので削除しました…
スピードワープ(AIスローモーション)
今までスローモーションにする前提でフレームレートを設定したのに、設定を間違えて普通に撮影してしまった経験はありませんか?
そのような時に、スピードワープがあれば頭を抱える必要はないかもしれません。
スピードワープを使えば以下のように、30fpsの動画でもスローモーションにすることが可能です。
【通常の速度 → 50%の速度(スピードワープなし) → 50%の速度(スピードワープあり)の順で比較】
AI恐るべし。
ただし、スピードワープを使うと極端に重くなるので、そこそこ性能が良いパソコンでないと扱いが難しいかと思います。
オブジェクト除去
画像編集では定番となっている「オブジェクト除去」。
不要なものを消せるって最高ですよね。
DaVinci Resolveなら映像でもそれを可能にしてくれます。
少しだけ違和感がありますが、普通に使えるレベルではないでしょうか。
今回のは単純だったので上手くいきましたが、他の被写体と重なったりしてしまうと難しいかもしれません。
32K解像度で120fpsまでサポート
DaVinci Resolveの無料版だと最大で4K 60fpsまで対応しています。
大体の場合は、その解像度&フレームレートでも全く問題はないのですが、さらに高い数値で編集&レンダリングをしたい場合は有料版にアップデートする必要があります。
有料版は、脅威の32K解像度、120fpsまで対応!
最近では8K動画の撮影に対応したカメラが続々と登場しているので、DaVinci Resolve Studioがさらに活躍する日が近いかも?
ただし、その解像度の動画を編集できる性能を持つパソコンは高い…. そしてストレージ管理も苦しい…
Wi-Fiも最速にしないと。
さまざまな課題がありますね。
「HDR10+」と「Dolby Vision」のグレーディング&レンダリング
なんだか英語とカタカナばかりで分かりづらいですね。
順番にみていきましょう。
まず、「HDR」の意味を確認しておきます。
HDR(High Dynamic Range、ハイダイナミックレンジ)とは、従来のSDR(スタンダードダイナミックレンジ)に比べてより広い明るさの幅(ダイナミックレンジ)を表現できる技術のこと
これまで動画を撮影して、空が真っ白になったりする「白飛び」や影や暗い箇所が真っ黒になってしまう「黒つぶれ」を経験したことがあるかと思います。
従来のカメラだと表現できる明るさの幅(ダイナミックレンジ)が狭いので、どうしても白飛びや黒つぶれが起こってしまいます。
一方で、「HDR」であればダイナミックレンジが広いので、そういったことは起きづらくなります。(肉眼で見るような感じに近い)
HDRにはいくつかの規格(種類)があって、上の方で書いた「HDR10+」と「Dolby Vision(ドルビービジョン)」は、それぞれ違ったHDRの規格です。
それらはHDRの中でも上位規格に分類される優れもの。
「Dolby Vision」はiPhone 12の登場によって聞く機会が増えてきたかもしれませんね。
「HDR10+」と「Dolby Vision」がどのように優れているのかについては、ここでは省きますが、もしそれらを扱いたいのであれば有料版にアップグレードする必要があります。
先ほど「グレーディング&レンダリング」と書きましたが、ここでは以下のニュアンスで捉えてもらえればOKです。
- グレーディング → 映像の階調(色や明るさの濃淡の段階数)と色調を整える加工処理
- レンダリング → 編集したデータを動画という形に変換すること
これで『HDR10+とDolby Visionのグレーディング&レンダリング』の意味が理解できたかと思います。
なお、HDR10+やDolby Visionより広く使われている規格である「HDR10」であれば、無料版でも編集できるようです。(DaVinci Resolve 17~)
HDR動画に対応している動画編集ソフトの数が多くない中、無料って…. ナイス!
他にもDaVinci Resolveの有料版でしか使えない機能は多々ありますが、とりあえず紹介はここまでにしておきます。
有料版を買う価値はある?
ここまで読んでくださったなら、有料版を買う価値はあるかどうかは明白になったのではないでしょうか。
シンプルに、ここで紹介した機能が普段の編集でも役に立ちそうだなと思ったら、アップグレードしても後悔することはないはず。
個人的には「GPUアクセラレーション」と「ノイズ除去ツール」が特にお気に入りで、有料版にアップグレードしたことに満足しています。
もし、
とにかく編集時間を短くしたい!
サードパーティ(他社製)のノイズ除去ツールや美肌加工系のプラグインの購入を検討している
といったふうに考えているのであれば、買い時だと思います。円安の影響で値上がりする可能性がありますし。
※ 記事内のいくつかの画像はDaVinci Resolve Studio公式ページから引用しています。